星新一による「文学的敵討ち」の書『人民は弱し 官吏は強し』
本作『人民は弱し 官吏は強し』の作者は星新一、言わずと知れたショート・ショートの名手である。しかし、本作はショート・ショートではなく、父親である星一氏(以降、「星氏」は一氏の方を指す)の事業の成功と挫折を描いた伝記小説的ノンフィクションである。管理人は本 ...
チェス・将棋・囲碁でのAIへの敗れ方『われ敗れたり』
伝統的なボードゲームのすべてで、人間はAIの前に屈してしまった。その順番は、盤の小さい順で、チェス、将棋、囲碁、である。本書『われ敗れたり』は、2012年1月、人間が将棋AIに屈する前後、当時日本将棋連盟会長であった米長邦雄永世棋聖が、自ら将棋AIボンク ...
貸し手が利子を支払うとは『緊急解説 マイナス金利』
日銀による金融緩和の奥の手として、2016年2月、突如としてマイナス金利が導入された。欧州ではかなり以前から実施されていたので、まったく新規の策というわけではなかったが、ほとんど事前予想になかっただけに金融経済界はどよめいた。 金融政策としてのマイナス金 ...
現代政治を斬る壮大な道徳理論『社会はなぜ左と右にわかれるのか』
本書『社会はなぜ左と右にわかれるのか』は、最近読んだ本の中で最も有益なものの一つだった。本書はもともと、政治的リベラルであった著者の、なぜ(アメリカの政治において)リベラル派は保守派に負け続けているのか、という問題意識に端を発している。それを、著者の専門 ...
アマゾン少数民族の言語と宇宙『ピダハン』
ピダハンとは、アマゾンの奥地に暮らす400人ほどの少数民族。本書『ピダハン』は、キリスト教の伝道師であった著者が、30年がかりで彼らの独特の文化と言語を研究した記録だ。著者は、その間何度も、家族と共に彼らの居住地を訪れ、彼らと共に生活し、研究を進める。い ...
苦悩するハードウェア脳『全脳エミュレーションの時代』
AIが本当にシンギュラリティに到達したら、どうなるのだろうか。AIが人間を滅ぼして人間にとって代わるのだろうか。AIが地球(あるいは地球外)に独自のコミュニティを作って、新たな「生命体」として繁栄するのだろうか。たいへん興味深く、また恐ろしい話でもあるが ...
漱石の生涯の思索の結晶『私の個人主義』
文豪漱石は、講演の名手でもあったという。本書『私の個人主義』の中にも、「紆余曲折の妙がある」という他の講演者による評が出てくる。実際に読んでみても、誰にでも分かる日常の例(かなり下世話なものまで)から初め、軽妙洒脱に話を展開させ、深遠な結論にまで持ってい ...
プラトン『国家』からの哲学2000年の進歩
プラトンは、紀元前400年ころアテナイに生きた人である。現代の我々とは大きな隔たりがあるが、「西洋哲学の歴史はプラトンへの膨大な注釈である」とまで言われた影響力を通して、現代の我々ともつながっている。そういうプラトン(と師であるソクラテス)の考えそのもの ...
理想の電子書籍デバイスとは
タイトルは「理想の」としたが、管理人は電子書籍のデバイスにはそれほど多くを望んでいない。なぜなら、紙媒体の場合には、物理的な性質がすべて固定されてしまっているにも関わらず、それほど困らないからだ。だから、「長時間読書しても目が疲れない」といったことはあま ...
コンピュータ・シミュレーションで探る最適戦略『つきあい方の科学』
本書『つきあい方の科学』は、一風変わった人間関係、社会関係の本である。ある意味、ゲーム理論の「古典」とも言える。本書を特に有名にしたのが、著者が行った実験と、その結果である。著者は、経済学や心理学など各分野で活躍するゲーム理論の研究者14名を招待し、コン ...