実はそれほど信用できない『写真の読み方』
写真はそれほど信用できるものではない。加工による偽造が出来てしまういう話ではない。写っているもの自体は正しくても、写真の「意味」はおいそれと信用できないということだ。写真は「真」を「写」すと書くが、それはいつかどこかでそのような一瞬があった、というだけの ...
忠臣蔵は忠義の物語にあらず『忠臣藏とは何か』
忠臣蔵というものが分からなかった。端的に、たかだか主人の名誉くらいの話で生命を投げ出すなどというのは気が知れないということだ。史実としてのそれ(赤穂事件)や成立期の芝居としてのそれは江戸時代の話だから古い時代の話と割り切れたが、現代人までが年の瀬ともなる ...
権利と価値との衝突『「レンブラント」でダーツ遊びとは』
本書『「レンブラント」でダーツ遊びとは』は、文化的遺産について、権利と価値あるいは価値と価値が衝突する場合、これをいかに調整するかという課題に取り組んだものである。ショッキングな本書の題名は、それを端的に表している。レンブラントの絵画、例えば「夜警」であ ...
凡俗と稀代の音楽家をめぐる言葉の洪水『ジャン・クリストフ』
本作『ジャン・クリストフ』は、ノーベル文学賞も受賞したロマン・ローランの代表作。主人公のクリストフは、べートーヴェンがモデルになっているらしい。作者には、『ベートーヴェンの生涯』という伝記作品もあり、そちらの方は当然のことながら、才能と栄光とに包まれてい ...
名画を説く絵画のような文章『名画を見る眼』
本書『名画を見る眼』は、岩波新書で正続二巻。続編中の一編に驚いたので紹介したい。著者の高階秀爾氏の本は以前にも取り上げたのだが、その時の本のテーマは著者の専門外の日本の美。今回のは専門中の専門である西洋美術。本書は、著者が西洋の名画を一点10頁くらいで、 ...
インターネットで観るvs.現物を観る『とっておき 美術館』
本書『とっておき 美術館』は、著者が訪れた個性的な(そして比較的小さな)美術館についてのエッセイ集である。著者は、ドイツ文学の研究が本職という人らしい。海外を含む45の美術館が収められているが、ルーブル美術館や国立西洋美術館といった有名どころは初めから対 ...
漢字文化圏の言葉と芸術『書とはどういう芸術か』
管理人は、「書」については素人である。しかし、たまたま読んだ本書『書とはどういう芸術か』は、意外にも興味深く感じられた。本書の本題は、書家である著者が、書の芸術性の本質を探るという表題どおりのもの。それ自体は、はっきりと言い表すことは難しいものの明らかで ...
版画家エッシャーの心『無限を求めて』
本書『無限を求めて』は、独特の平面分割や奇妙な立体等で有名なエッシャーの文章を集めたもの。自身の芸術観を語る往復書簡と演説、(病気のため実現しなかった)アメリカでの講演用の原稿、平面の正則分割に関する論考、そして晩年のエッシャーと親しかったフェルミューレ ...
チャプリンから民主主義へのメッセージ『独裁者』
本作『独裁者』は本ではなく映画、チャプリンの凄まじいまでの風刺映画だ。「風刺」を超えて、笑いによる「直接攻撃」という感がある。本作はあまりに有名であるし、批評もし尽くされているが、管理人なりの感想をということで、今回の題材に選んでいる。 本作の舞台は、 ...
版画のオリジナリティとは『広重「東海道五十三次」の秘密』
浮世絵版画「東海道五十三次」と言えば、歌川広重の代表作、自身が京都御所への公式派遣団の一人として東海道を旅した時のスケッチを基に1833年に制作された、というのが定説である。これに対し、本書『広重「東海道五十三次」の秘密』は、驚きの新説を持ち出す。「五十 ...