歴史,芸術

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 忠臣蔵というものが分からなかった。端的に、たかだか主人の名誉くらいの話で生命を投げ出すなどというのは気が知れないということだ。史実としてのそれ(赤穂事件)や成立期の芝居としてのそれは江戸時代の話だから古い時代の話と割り切れたが、現代人までが年の瀬ともなる ...

文学,青空文庫

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 本作『パノラマ島綺譚』は、江戸川乱歩としては長目の中編、奇想天外なある方法で無人島に自身の芸術の粋を集めた「パノラマ島」を築くという狂気を描いたものだ。ミステリーとしてはその「方法」のところがメインなのかも知れないが、本作をただのミステリーに終わらせない ...

文学,青空文庫

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 本作、ジャック・ロンドンの『荒野の呼び声』は、何度か映画化されているし、確かアニメにもなっていたはずである。それなりに有名であることは知っていたし、原作があることも知っていた。ただ、映画やアニメが先に来るとチープ感がついて回る感じがして、敬遠していたわけ ...

社会,青空文庫

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 本書『政治学入門』は、わずか100頁ほどの小著であるが中身は濃い。「政治学」とあるが政治そのものについての本であり、「入門」とあるが教科書的な入門書ではなく著者の信念がこもっている。「政治」の本質に遡って基本的な視座を示してくれる、さらに言えば、多くの人 ...

文学

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 本作『密やかな結晶』は、当代一流のストーリー・テラーである作者の比較的初期の作品である。少し前にブッカー国際賞の候補になったのは、作者の作品としては珍しく社会目線が強い作品である故か。もっとも、舞台である架空の島から次々とモノが消滅していくという異様な世 ...

数理

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 統計処理や計量経済のようなデータ分析を扱った本は数多あるが、ありそうでなかったのが本書『ダークデータ』のような、処理や分析の対象となるデータそのものを扱った本だ。ダークデータとは、正しい判断を下すのに必要だが欠けている情報やデータである。真実を客観的に照 ...

ノンフィクション

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 本書『失われた名前』は、幼くして南米コロンビアのジャングルに置き去りにされ、「サルとともに生きた」女性の自伝である。「サルとともに生きた」とは副題の言葉であるが、実際、半ばサルの仲間になりながら、見様見真似でジャングルを生き抜いたのだ。もっとも、本書の半 ...

文学

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 本作『シルヴェストル・ボナールの罪』は、作者アナトール・フランスの出世作ということである。主人公のボナール先生は中世修道院の歴史を研究する老学士院会員、そして本に囲まれ古書の目録を味読する本の虫であるから、ギッシングの『ヘンリ・ライクロフトの私記』のよう ...

社会,ノンフィクション

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 本書『村に火をつけ、白痴になれ』は、無政府主義研究者である著者による伊藤野枝の(きわめて軽い文体による)評伝である。野枝については大杉と共に『科学の不思議』で触れたことがあるが、本書はその主義と生き方そのものを伝える本である。表題は小説の中での話のようで ...

文学,心理

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 本作『殺された天一坊』は、探偵小説の古い小品。作者の浜尾四郎は検事から弁護士に転じた身で、かつては犯罪心理を研究していたという。現在でも専門家がその筋の作品を書くということはあるが、当時は珍しかったかも知れない。作者には『殺人鬼』のような本格的な探偵小説 ...