漱石の生涯の思索の結晶『私の個人主義』
文豪漱石は、講演の名手でもあったという。本書『私の個人主義』の中にも、「紆余曲折の妙がある」という他の講演者による評が出てくる。実際に読んでみても、誰にでも分かる日常の例(かなり下世話なものまで)から初め、軽妙洒脱に話を展開させ、深遠な結論にまで持ってい ...
プラトン『国家』からの哲学2000年の進歩
プラトンは、紀元前400年ころアテナイに生きた人である。現代の我々とは大きな隔たりがあるが、「西洋哲学の歴史はプラトンへの膨大な注釈である」とまで言われた影響力を通して、現代の我々ともつながっている。そういうプラトン(と師であるソクラテス)の考えそのもの ...
コンピュータ・シミュレーションで探る最適戦略『つきあい方の科学』
本書『つきあい方の科学』は、一風変わった人間関係、社会関係の本である。ある意味、ゲーム理論の「古典」とも言える。本書を特に有名にしたのが、著者が行った実験と、その結果である。著者は、経済学や心理学など各分野で活躍するゲーム理論の研究者14名を招待し、コン ...
帝大教授にして山林王の蓄財術『私の財産告白』
本書『私の財産告白』は、タイトルのとおり著者が自身の蓄財術(あるいは広く財産管理術)を振り返ったものであるが、「知る人ぞ知る」珍本と言えるものだ。その理由は著者にある。この種の本を書く人といえば、成功した投資家か経営者というのが相場だろうが、本書の著者で ...
日々の実践コミュニケーション論『理解の秘密』
「インストラクション」と言われると、指図や命令の類と考えがちだが、本書『理解の秘密』によれば、「どんなときにもインストラクションはついてまわる」ということだ。飛行機の乗客が安全装置の説明を受ける、会議に出席する、同僚と話す、新しい器具を買う、レストランで ...
ヘルマン・ヘッセの思想と精神と芸術『ガラス玉演戯』
本作『ガラス玉演戯』は、ヘルマン・ヘッセの最後の大作、ノーベル文学賞受賞の決定打となった作品だ。本作の中心にあるのは「ガラス玉演戯」、すなわち、人類が生み出した科学と芸術の内容と価値を、高度に発達した神秘の言葉で表現し、相互に関係づけ、画家やオルガン奏者 ...
繰り返される『論文捏造』は科学の崩壊なのか
日本でも数年前、STAP細胞にまつわる事件(STAP事件)があった。この時はまさに「劇場型」とも言うべき事件の展開があって世間の注目を集めたが、結局、ES細胞の混入ということで落ち着いた。管理人としては、個々の経緯で腑に落ちないところも残ったが、世間はも ...
『これから「正義」の話をしよう』で考える「トロッコ問題」
本書『これから「正義」の話をしよう』は、ハーバード大学のサンデル教授が行った「白熱教室」を書籍化したものだ。日本でも話題になったが、正直なところ、あれだけ売れたのは「ハーバード」のブランドとプレゼンテーションの手際が大きかったように思う。本書の内容そのも ...
異能の天才数学者ラマヌジャン『無限の天才』
どんな分野であれ、破天荒の天才というのは、夢を託したくなる存在だ。本書『無限の天才』で描かれるインドの天才数学者ラマヌジャンは、まさにそのような人物だ。ただの天才とか、超天才とかいうのとは次元が異なる、常人の理解を絶するような存在なのだ。数学の天才という ...
無信仰者が読む『なぜ私だけが苦しむのか』と『ヨブ記』
「なぜ、善良な人が不幸にみまわれるのか」、この問いこそが本書『なぜ私だけが苦しむのか』のメインテーマである。著者が「これ以外のすべての神学的な会話は、気晴らしにしかすぎません」と言い切る重い問いだ。 管理人のように特に信仰を持たない人間であっても、素朴な ...