読書と騒音④ 生涯読書時間が最も長い喫茶店
読書と騒音の4回目。自宅が意外に読書に向かないかも知れないということで、外に出てみる。その初回は喫茶店、ファミレスなども同じカテゴリに入れてよいだろう。実際のところ、メモをとったりするのでない、普通の読書が一番捗るのは喫茶店ではなかろうか。おそらく管理人 ...
未完にもほどがある未完の大作『神州纐纈城』
本作『神州纐纈城』は、未完ながら作者である国枝史郎の代表作。人の血を絞って染めた纐纈布をめぐって話が進むので、ジャンルとしては怪奇モノというようなことになるのだろうが、それに納まらない内容がある。本作と同じくらいの怪奇モノであれば、小説でも映画でも漫画で ...
権利と価値との衝突『「レンブラント」でダーツ遊びとは』
本書『「レンブラント」でダーツ遊びとは』は、文化的遺産について、権利と価値あるいは価値と価値が衝突する場合、これをいかに調整するかという課題に取り組んだものである。ショッキングな本書の題名は、それを端的に表している。レンブラントの絵画、例えば「夜警」であ ...
異国の経済を立て直した昭和の日本式エネルギー『ルワンダ中央銀行総裁日記』
本書『ルワンダ中央銀行総裁日記』は、正にタイトルどおりの本。話が開発途上国の経済立て直しというものだから、浮かれた話は一切出てこないのだが、冷静に考えてみるとやっていること自体は相当に破天荒である。地球の裏側の国で何かを売り歩いたとか、何かのビジネスを立 ...
人情モノであって任侠モノでない『花と龍』
そういう映画があることは知っていたが、原作が小説であることは知らなかった本書『花と龍』。読んだのもたまたま暇だったからであり、それほど期待はしていなかった。しかし、読んでみて驚いた。とにかく面白い。同じ大河小説である『ジャン・クリストフ』はノーベル文学賞 ...
実は最高聖人を生み出す人間機械論『人間とは何か』
人間、どう変わるか分からない。本作『人間とは何か』の作者マーク・トウェインは、明るさに満ちたアメリカ文学の最高峰『ハックルベリィ・フィンの冒険』の作者でもあるのだが、晩年は本作のようなペシミズムに沈んだ。しかし、近年の脳科学の成果によれば、作者の人間機械 ...
真実の価値とは何か『真実について』
以前に「真実へのアンチ・テーゼ『嘘の効用』」で真実の価値に疑問を呈したことがあるが、これに回答してくれそうな本が、本書『真実について』である。著者は道徳哲学の重鎮であるフランクファート、正攻法の議論だ。 もっとも、管理人が反対したいのは、真実そのもの( ...
人も組織も誤らせるバイアスの異母兄弟『NOISE』
本ブログで最初にレビューした『ファスト&スロー』で有名な行動経済学者ダニエル・カーネマンらの新著。人の判断のばらつき、すなわち『ノイズ』に特化した大冊である。判断誤りのうち、正しい値からのズレ、すなわち「バイアス」は目につきやすく、直すことは容易でないと ...
哀しく美しい母子の物語、ではなかった『母子像』
著者である久生十蘭の作品を読んだのは、本書『母子像』が初めてである。「小説の魔術師」などと呼ばれていて興味があったので、まず手始めにということで、手軽に読める短編、それも世界短篇小説コンクールで第一席を獲得という本作を手に取った。サイパン陥落に関係してい ...
異常と正常、狂気と天才『妻を帽子とまちがえた男』
本書『妻を帽子とまちがえた男』は、脳神経科医である著者の初期のノンフィクション作品である。表題のとおり、たいへん奇妙な症状を持った患者がたくさん登場するのだが、単なる医学的な報告ではなく(多少は説明されているが)、人間や人生についての考察だ。登場する患者 ...