スポーツ賭博から厚底シューズまで『スポーツルールの社会学』
本書『スポーツルールの社会学』は題名どおり、スポーツの歴史や社会との関わりを主にルールの側面から俯瞰した小著である。近年のスポーツの変質を嘆くあまり、妙なところに力こぶが入っているところもあるが、興味深い話が幾つも出ている。少し古くなってしまっていて、最 ...
日本的精神が生む受動的全体主義の悲劇『特攻』
本書『特攻』は題名の通りあの特攻、すなわち死を前提に敵艦に突っ込んだ「特別攻撃隊」について書かれたものだ。特攻に関する文献は本書でもいろいろ引かれているように多数ある。その中で、比較的新しい資料やインタビューを含めて書き下ろされたのが本書だ。多くの言葉を ...
「クオリティ」の禅問答哲学『禅とオートバイ修理技術』
奇書好きの管理人にとって外せないのが、本書『禅とオートバイ修理技術』だ。題名からして奇異であるが、何やら哲学やテクノロジー論と関係したものらしい。そもそも管理人が本書の存在を知ったのは、たまたま読んでいた本が何と二冊続けて本書を引用していたからだ。二冊は ...
地球温暖化でイーハトーヴを救え!『グスコーブドリの伝記』
本作『グスコーブドリの伝記』は、宮沢賢治の童話。内容をつづめれば、主人公のブドリが、貧しい少年時代からの苦学の末、クーボー大博士に見込まれて火山局の技師となり、ついには科学技術の力をもって激しい寒気と凶作に立ち向かう、自身の生命という尊い犠牲を払って、と ...
隠れた哲学パラメータをえぐり出す『100の思考実験』
本格的な哲学や倫理学は取っつきにくい。一般向けの本を書いてもあまり売れないだろう。そもそも書くのが厄介だ。しかし、思考実験を持ってくると、話は変わってくる。本書『100の思考実験』はそこを狙い撃ちしたような本だ。思考実験の本領はそういうところにあるのでは ...
小津映画ばりの超絶モノクローム小説『桑の実』
管理人はそれほど起伏のない小説も好んで読むのだが、本作『桑の実』には驚かされた。本当に何も起こらない。起こらないどころか、何か起こりそうなところをあえて抑え込んでしまうような徹底ぶりなのだ。作者は「赤い鳥」など童話で有名な鈴木三重吉、童話の手法が何か関係 ...
全体主義から共産主義を経て権威主義へ『隷従への道』
本書『隷従への道』は、著者ハイエクの主著の一つ。自由主義や民主主義が全体主義へと「隷従」していきかねない思想と社会の動きに警鐘を鳴らしたものだ。本書の出版は1944年、第二次世界大戦中であるから、必ずしも西が東を敵と見た本ではない。むしろ西の中に胚胎しつ ...
昔の教科書から様変わりした時間と空間の最先端『宇宙を織りなすもの』
本書『宇宙を織りなすもの』は生粋の科学本、宇宙を構成する時間と空間の正体に迫った本だ。著者のブライアント・グリーンは、欧米に良くいる一流の学者でありながら筆が立つというタイプで、とにかくもの凄い筆力である。原子の内部から宇宙の果て、さらにはブラックホール ...
性善説と性悪説と捏造研究の歴史『Humankind 希望の歴史』
性善説か性悪説か、本書『Humankind 希望の歴史』の主張は単純にそれだけの話ではない。しかし、旧約聖書以来の西洋思想に染みついた性悪説とそれがもたらす(自己成就予言的な、あるいはノセボ効果的な)害悪を正面から叩く、それも事実と証拠に照らして叩く、と ...
遠い昔の遠くない記憶『青べか物語』
本書『青べか物語』は、作者が1年半ほど住んでいた浦粕での人や事件を題材にした小説である。その1年半とは1928年頃のこと、浦粕とは現在の浦安である。実は管理人も30年以上も前にその近くに住んでいたことがあるのだが、本作に出てくる浦粕とは比べ物にならない。 ...