改憲と第9条をめぐる不幸『50年前の憲法大論争』
本書『50年前の憲法大論争』は、1956年に開かれた衆議院の公聴会で、「憲法調査会法案について」なされた喧々諤々の議論の記録を編集したものである。これを読む限り、当時は少なくとも、近年行われている改憲の議論よりも内実のある議論がなされていたようである。と ...
薄気味の悪い政治ミステリー『夜の来訪者』
本作『夜の来訪者』は、ジャーナリストや批評家として活動したほか、社会運動にも積極的であったプリーストリーの戯曲。社会主義的色彩が濃厚な作品である。あらすじは、娘の婚約を祝う団らん中の一家のもとを、捜査中の警部を名乗る男が訪れる(夜の来訪者)。若い女性が自 ...
現代の労働者管理の元祖か『奴隷のしつけ方』
本書のタイトルは『奴隷のしつけ方』という奇妙なものだが、もちろん、そのような内容のマニュアル本ではない。本書は、古代ローマの架空の貴族(マルクス・シドニウス・ファルクス)が奴隷管理法を語り、実際の著者(ジェリー・トナー)がその監修と解説を担当する、という ...
経済学と社会学と歴史学への招待『社会科学における人間』
本書『社会科学における人間』は、社会科学における人間類型(これは、「ある時代のある国民が全体として特徴的に示す思考と行動の様式、そのタイプ」と説明されている、ウェーバーのいう「エートス」のようなもの)について概説したものだ。著者の大塚久雄氏は、戦後の経済 ...
トラウマもナラティブもない日本のテロ『歪んだ正義』
世界ではテロ的なことが頻繁に起きている。日本でも多少方向性は違うが無差別殺人のようなことがたまに起こる。そこまで行き着かなくとも、理不尽な負のエネルギーが他人に向けられることは少なくない。こうした行為に、人格異常とか身勝手の極みとかレッテルを貼ることは易 ...
原子力開発利用は沈むのか『原子力の社会史』
本書『原子力の社会史』は、日本の原子力開発利用の草創期からの歴史を、批判的視点で鳥瞰した本である。最後の章に福島原発事故が入っているが、これは事故後に追加されたもの。本書の旧版はその10年前に出ていたし、もとより著者の研究はそれ以前から一貫していた。福島 ...
星新一による「文学的敵討ち」の書『人民は弱し 官吏は強し』
本作『人民は弱し 官吏は強し』の作者は星新一、言わずと知れたショート・ショートの名手である。しかし、本作はショート・ショートではなく、父親である星一氏(以降、「星氏」は一氏の方を指す)の事業の成功と挫折を描いた伝記小説的ノンフィクションである。管理人は本 ...
貸し手が利子を支払うとは『緊急解説 マイナス金利』
日銀による金融緩和の奥の手として、2016年2月、突如としてマイナス金利が導入された。欧州ではかなり以前から実施されていたので、まったく新規の策というわけではなかったが、ほとんど事前予想になかっただけに金融経済界はどよめいた。 金融政策としてのマイナス金 ...
現代政治を斬る壮大な道徳理論『社会はなぜ左と右にわかれるのか』
本書『社会はなぜ左と右にわかれるのか』は、最近読んだ本の中で最も有益なものの一つだった。本書はもともと、政治的リベラルであった著者の、なぜ(アメリカの政治において)リベラル派は保守派に負け続けているのか、という問題意識に端を発している。それを、著者の専門 ...
アマゾン少数民族の言語と宇宙『ピダハン』
ピダハンとは、アマゾンの奥地に暮らす400人ほどの少数民族。本書『ピダハン』は、キリスト教の伝道師であった著者が、30年がかりで彼らの独特の文化と言語を研究した記録だ。著者は、その間何度も、家族と共に彼らの居住地を訪れ、彼らと共に生活し、研究を進める。い ...