北朝鮮での数奇な日常『拉致と決断』
本書『拉致と決断』は、北朝鮮による拉致の被害者の一人である著者が、拉致から24年後に日本に帰国するまでの生活と思いを、帰国の10年後に著したものである。それだけの年月が「北朝鮮での24年間全体に真正面から向き合」うのに必要だったということだ。管理人は、数 ...
国家の危機を乗り越える力『危機と人類』
本書『危機と人類』は、毀誉褒貶の激しい「ベストセラー学者」である著者ジャレド・ダイアモンドによる、国家の危機とそこからの回復を扱った歴史書である。国家の危機を、個人の危機への対応策(特に、ボストンのナイトクラブで起きた火災事故への対応策として開発された心 ...
差別と差別語の間『差別語からはいる言語学入門』
本書『差別語からはいる言語学入門』は、差別語をテコにした言語学の本である。さまざまなニュアンスが染みつく日常語は豊かな言語の土壌である反面、その負のニュアンスが肥大化すると差別語を生み出す、したがって差別語を通して見ると生きた言語のさまざまな側面が見えて ...
笑いは武器かガス抜きか『ナチ・ドイツと言語』
少し以前に、日本のコメディー界には欧米のそれにあるような権力批判が欠けているのではないか、というような話があった。確かに、(皆が皆ではないにしても)欧米の一流のコメディーには笑いだけでなく、権力者に対する風刺や、政治批判・社会批判が込められていることが多 ...
年末恒例の読みさし本クリア
毎年、年末が近くなるとやっていることがある。その年に読み始めたが、読みさしのまま止まっている本を、まとめて仕上げることだ。昨年の場合は、アシュトンの『産業革命』(戦後の本であるが、思ったより産業革命の肯定面を重視するようだ)とチェーホフの『桜の園・三人姉 ...
科学と魔術とトリックの日本社会『科学と社会』
本書『科学と社会』の著者は中谷宇吉郎。寺田寅彦を師に持ち、北大を拠点に低温科学の研究に多大の業績を残した物理学者である。世界で初めて人工雪の製作に成功したことで知られるほか、科学を題材とした一般向けの随筆もよくした。中でも『雪』は、科学者としての冷静な観 ...
猥雑と混沌の『上海』
本作『上海』は、作者である横光利一の最初の長編小説であり、代表作の一つでもある。そして、「序」で述べられているように、後から改稿もした「最も力を尽くした作品」であるようだ。ただ、その割になのか、それ故になのか、作者の短編、例えば『機械』や『微笑』に見られ ...
科学は神話の後継者『宇宙の始まり』
本書『宇宙の始まり』は、スウェーデンの物理化学者である著者が1907年に書いた、神話時代から現代(著作時点)までの宇宙開闢の認識についての「進歩」を語ったものである。あえて「進歩」と言ったのは、著者が科学者であるばかりでなく、同時代の西欧の知識人の例に漏 ...
フォト・ジャーナリズムに賭ける『南ベトナム戦争従軍記』
本書『南ベトナム戦争従軍記』は、ニュース・フォトグラファーである著者が、ベトナム戦争に従軍取材した記録をまとめたもの。現地取材どころか、戦闘の真っただ中での生々しい戦争の姿を描き出している。管理人の世代でも、ベトナム戦争はほぼ「歴史」である。当時と今とで ...
超絶AIと意味のない世界『スーパーインテリジェンス』
AIが進化している。いろいろと人間脳の制約を引きずる全能エミュレーションなどと異なり、機械的なAIはいかに困難で時間がかかるとしても、シンギュラリティのレベルに達することに原理的な制約は見当たらない。そして、いったん軌道に乗りさえすれば、再帰的に自身の能 ...