事実に基づいて世界を見る『FACTFULLNESS(ファクトフルネス)』
情報が溢れる世の中になったが、現在の世界の状況と我々の抱いているイメージがいかに乖離しているのか、分からせてくれるのが、本書『FACTFULNESS(ファクトフルネス)』だ。例えば、「低所得国に暮らす女子の何割が、初等教育を修了するでしょう?」、「世界中 ...
西洋美術の碩学が問う『日本人にとって美しさとは何か』
本書『日本人にとって美しさとは何か』は、絵画から、建築、音楽、和歌、文字まで、古今の日本の美に関する講演記録や寄稿文をまとめたものである。著者の高階秀爾氏と言えば、元国立西洋美術館館長、西洋美術の碩学というイメージであったから、「日本人にとって……」とい ...
功罪相半ばする驚くべき本『服従の心理』
またくもって、驚くべき本。功罪相半ばする、驚くべき本。 驚きその一は「功」、すなわち本書『服従の心理』が扱っている実験の結果。後に「アイヒマン実験」とも言われた実験で、ごく普通の善良な人々の大多数が、科学者による心理実験を装った服従環境の下、被験者に致 ...
生活を覆い尽くす小社会『怒りの葡萄』
本書『怒りの葡萄』は、オクラホマの大平原を砂嵐が襲い、耕地は荒野と化してしまう、農民達は「約束の地」であるはずのカリフォルニアの沃野を目指すが、ようやく辿り着いたカリフォルニアでも……という物語。作者スタインベックの代表作の一つである。作中、主人公のトム ...
一万時間が天才を作るのか?『天才!』
本書『天才!』の著者はマルコム・グラッドウェル、本を出せば当たるという超ベストセラー作家だ。なるほど、話の展開は巧みだし、畳みかけるようなエピソードで読者を飽きさせず、納得させてしまう技はさすがというほかない。本書の中でも特に有名になったのは「一万時間の ...
子供の頃に「名作」を読むことの是非
子供の頃、例えば中学や高校くらいで「名作」(古典的な文学作品)に親しむべきかどうか、と問われれば、大概の人はイエスと答えるだろう。親や学校の先生ならなおさら、出版社もまた(本音は営業だろうが、それはそれで結構なことだ)若者層の読者に向けて「〇〇の百冊」と ...
自由意志との対決『マインド・タイム』
自分が何かしようと意識するよりも、その何かをするための脳プロセスの方が時間的に先行している、という驚きの実験結果が本書『マインド・タイム』の中核だ。そうだとすると、意識は自分の行為をコントロールするためにあるのではなく、その持主に「自分の行為は自分でコン ...
聖俗が対決する「超人」の一代記『レ・ミゼラブル』
本書『レ・ミゼラブル』は、一片のパンを盗んだために19年間も投獄され……と紹介されることが多いが、それは物語の導入で、実は本筋とあまり関係がない。そもそも窃盗での当初の刑期は5年、その後に4回も脱獄を繰り返しての19年である。当時としても重かったのだろう ...
ノーベル経済学賞受賞の心理学者が書いた『ファスト&スロー』
管理人は、リアルの世界で他人に本を勧めることはしない。その本に興味がなければどうせ読まないだろうし、興味があれば要らぬお節介だからだ。実際、たまにしか本を読まない人が、たまに読んだ本に入れあげて「これは良い本だから読んでみて」などと押し貸ししてくることが ...