謎が謎を呼ぶメタ・ミステリー『深夜の市長』
管理人は、SFやミステリーの類を読むのは自粛している。嫌いなわけではなく、面白すぎてそればかり読むようになってしまいそうだからだ。そこで、何かの理由をつけて、これは例外なのだという顔をして読むことにしている。本作『深夜の市長』での理由は、作者が日本のSF ...
年末恒例の読みさし本クリア
毎年、年末が近くなるとやっていることがある。その年に読み始めたが、読みさしのまま止まっている本を、まとめて仕上げることだ。昨年の場合は、アシュトンの『産業革命』(戦後の本であるが、思ったより産業革命の肯定面を重視するようだ)とチェーホフの『桜の園・三人姉 ...
猥雑と混沌の『上海』
本作『上海』は、作者である横光利一の最初の長編小説であり、代表作の一つでもある。そして、「序」で述べられているように、後から改稿もした「最も力を尽くした作品」であるようだ。ただ、その割になのか、それ故になのか、作者の短編、例えば『機械』や『微笑』に見られ ...
シェイクスピアの「人違い」劇の傑作『十二夜』
本作『十二夜』は、シェイクスピアの喜劇の中でも最高との評価がある。いわゆる「人違い」ものの恋愛話で、話そのものは他愛もないものだ。しかし、(解説によると)時の宮廷人に対する批判なども混ぜ込んでいるらしく、なかなか手が込んでいる側面もある。管理人は、全般に ...
エリート教養人の快楽と自己満足『罰せられざる悪徳・読書』
本書『罰せられざる悪徳・読書』は、蔵書2万5千冊という読書人である著者が、理想の読書について語ったものである。タイトルは、冒頭で引用されているアメリカの詩人の散文詩から採られたもの。訳者の解説によると著者のお気に入りで他書の表題にも使われているらしい。訳 ...
思春期の不安定小説『悲しみよ こんにちは』
本作『悲しみよ こんにちは』は、著者サガンのデビュー作、そしておそらく最も読まれた代表作だろう。と言うよりは、華々しいデビュー作の後はそれほど振るわなかったというのが実際のところかも知れない。本作にしても、少々刺激的な作品の主人公と、18歳という若さの女 ...
男女関係ぬきの『或る女』はどうだろうか
本作『或る女』は、有島武郎の長編小説。主人公である葉子は、非常に現代的かつ蠱惑的な女であって、倉地、木村はもとより、作中で名前が挙がるほどの男は皆、彼女の虜になってしまう。小説でそう創られているのだからそうだというしかないのだが、そんな女が実際どれほどい ...
核シェルターと秘密基地『方舟さくら丸』
本作『方舟さくら丸』は、安部公房の作品としては、特に有名な方ではないかも知れないが、管理人にとっては、他の作品と同じかそれ以上に惹かれる作品だ。本作は、主人公が地下採石場跡の巨大な洞窟に核シェルターの設備を造り上げ、そこで仲間との共同生活を始めたものの… ...
薄気味の悪い政治ミステリー『夜の来訪者』
本作『夜の来訪者』は、ジャーナリストや批評家として活動したほか、社会運動にも積極的であったプリーストリーの戯曲。社会主義的色彩が濃厚な作品である。あらすじは、娘の婚約を祝う団らん中の一家のもとを、捜査中の警部を名乗る男が訪れる(夜の来訪者)。若い女性が自 ...
職人の魂と親方の心『五重塔』
本作『五重塔』は、以前に言葉の問題で取り上げたことがあるが、小説の内容についてもレビューしておこう。小説としては露伴の代表作の一つで、新旧の二度、映画化もされている。なるほど、登場人物の個性、その心理描写、いくつかの「事件」、そして五重塔をめぐる分かりや ...