現代政治を斬る壮大な道徳理論『社会はなぜ左と右にわかれるのか』
本書『社会はなぜ左と右にわかれるのか』は、最近読んだ本の中で最も有益なものの一つだった。本書はもともと、政治的リベラルであった著者の、なぜ(アメリカの政治において)リベラル派は保守派に負け続けているのか、という問題意識に端を発している。それを、著者の専門 ...
苦悩するハードウェア脳『全脳エミュレーションの時代』
AIが本当にシンギュラリティに到達したら、どうなるのだろうか。AIが人間を滅ぼして人間にとって代わるのだろうか。AIが地球(あるいは地球外)に独自のコミュニティを作って、新たな「生命体」として繁栄するのだろうか。たいへん興味深く、また恐ろしい話でもあるが ...
コンピュータ・シミュレーションで探る最適戦略『つきあい方の科学』
本書『つきあい方の科学』は、一風変わった人間関係、社会関係の本である。ある意味、ゲーム理論の「古典」とも言える。本書を特に有名にしたのが、著者が行った実験と、その結果である。著者は、経済学や心理学など各分野で活躍するゲーム理論の研究者14名を招待し、コン ...
反捕鯨論の内実『鯨とイルカの文化政治学』
日本は昔から鯨(同種であるイルカを含む)を資源として利用してきた。欧米もまた、鯨を資源として利用してきた。しかし、欧米は自らの「利用」が商業的「収奪」であったことに気づいたものか、急速に保護に傾斜していって、利用を続けようとしている日本と対立するようにな ...
チャプリンから民主主義へのメッセージ『独裁者』
本作『独裁者』は本ではなく映画、チャプリンの凄まじいまでの風刺映画だ。「風刺」を超えて、笑いによる「直接攻撃」という感がある。本作はあまりに有名であるし、批評もし尽くされているが、管理人なりの感想をということで、今回の題材に選んでいる。 本作の舞台は、 ...
ご都合主義の生態系観に異議あり『自然はそんなにヤワじゃない』
以前にレビューした『チェンジング・ブルー』が気候変動についての正統派の一冊だとすれば、本書『自然はそんなにヤワじゃない』は生態系についての異端の一冊だ。「異端」と言っても、荒唐無稽な主張が展開されているわけではない。著者の専門である陸水生態学での成果を踏 ...
専門家と一般人との間の深い溝『専門知は、もういらないのか』
かつては一部の特権階級の独占物であった専門知は今や一般大衆に開かれた、はずであったが、実際にはそうはならなかった。むしろ、専門知や専門家を軽視する風潮が生まれ、専門知が支えるべき民主主義を危機に陥れている。本書『専門知は、もういらないのか』は、そうした実 ...
事実に基づいて世界を見る『FACTFULLNESS(ファクトフルネス)』
情報が溢れる世の中になったが、現在の世界の状況と我々の抱いているイメージがいかに乖離しているのか、分からせてくれるのが、本書『FACTFULNESS(ファクトフルネス)』だ。例えば、「低所得国に暮らす女子の何割が、初等教育を修了するでしょう?」、「世界中 ...
功罪相半ばする驚くべき本『服従の心理』
またくもって、驚くべき本。功罪相半ばする、驚くべき本。 驚きその一は「功」、すなわち本書『服従の心理』が扱っている実験の結果。後に「アイヒマン実験」とも言われた実験で、ごく普通の善良な人々の大多数が、科学者による心理実験を装った服従環境の下、被験者に致 ...
電子書籍の得失 - その最大の問題点は「全焼」
管理人は、海外のサービスが日本に入り出したころから、電子書籍(具体的にはKindle)を利用している。当初は少し抵抗があったものの、慣れてしまえば便利なことは確かだ。電車の中や空き時間にスマホで「ちょい読み」するとか、キーワードで全文検索するとか、電子書 ...