科学は神話の後継者『宇宙の始まり』
本書『宇宙の始まり』は、スウェーデンの物理化学者である著者が1907年に書いた、神話時代から現代(著作時点)までの宇宙開闢の認識についての「進歩」を語ったものである。あえて「進歩」と言ったのは、著者が科学者であるばかりでなく、同時代の西欧の知識人の例に漏 ...
フォト・ジャーナリズムに賭ける『南ベトナム戦争従軍記』
本書『南ベトナム戦争従軍記』は、ニュース・フォトグラファーである著者が、ベトナム戦争に従軍取材した記録をまとめたもの。現地取材どころか、戦闘の真っただ中での生々しい戦争の姿を描き出している。管理人の世代でも、ベトナム戦争はほぼ「歴史」である。当時と今とで ...
現代の労働者管理の元祖か『奴隷のしつけ方』
本書のタイトルは『奴隷のしつけ方』という奇妙なものだが、もちろん、そのような内容のマニュアル本ではない。本書は、古代ローマの架空の貴族(マルクス・シドニウス・ファルクス)が奴隷管理法を語り、実際の著者(ジェリー・トナー)がその監修と解説を担当する、という ...
経済学と社会学と歴史学への招待『社会科学における人間』
本書『社会科学における人間』は、社会科学における人間類型(これは、「ある時代のある国民が全体として特徴的に示す思考と行動の様式、そのタイプ」と説明されている、ウェーバーのいう「エートス」のようなもの)について概説したものだ。著者の大塚久雄氏は、戦後の経済 ...
原子力開発利用は沈むのか『原子力の社会史』
本書『原子力の社会史』は、日本の原子力開発利用の草創期からの歴史を、批判的視点で鳥瞰した本である。最後の章に福島原発事故が入っているが、これは事故後に追加されたもの。本書の旧版はその10年前に出ていたし、もとより著者の研究はそれ以前から一貫していた。福島 ...
アウシュビッツの極限悪と救いの途『夜と霧』
世の中には「絶望的な体験」とでも言うしかないものがある。幸いにして、管理人は今のところ、そこまでの体験はせずに済んでいる。それでも、戦争や内乱はともかくとして、自然災害、人的災害、犯罪、テロリズム……といった事件に巻き込まれる可能性は、今の日本でもないわ ...
原爆投下を論理で考える『戦争論理学』
戦争に論理はあるのだろうか。戦略や戦術はあるかも知れないが、論理とは縁がなさそうに思える。そういう思い込みがあるから、本書『戦争論理学』のタイトルは目を引く。しかし、戦争という歴史的事実について論理的に議論することはできるし、またすべきでもある。本書は、 ...
進化的ミスマッチが病を引き起こす『人体600万年史』
人間の人間たる所以は、発達した脳による高度の精神能力にある、というのは確かにそのとおりだろう。本書『人体600万年史』も、人間を「きわめて文化的な種」と位置づけている。しかし、同時に「筋肉に対する脳の勝利という見方だけで現生人類の進化を捉えるのは不正確で ...
40年後の自己吟味『記録・沖縄「集団自決」裁判』
本書『記録・沖縄「集団自決」裁判』は、太平洋戦争中に沖縄で起きたいわゆる「集団自決」についての『沖縄ノート』の記述に関して、元軍人とその親族(原告)が出版社である岩波書店と著者である大江健三郎氏(被告)を訴えた民事訴訟の、被告側からの記録である。元軍人が ...
常識を覆すゲノム革命の力『交雑する人類』
本書『交雑する人類』は、ネアンデルタール人のDNA解析にも携わった古代DNA解析の第一人者の手による新たな人類史である。その中心には、これまでの考古学や人類学の定説を覆す成果を出し続けている「ゲノム革命」がある。とにかく、本書を通じて、うるさいくらいに「 ...