読書と騒音③ 読書を妨げる意外な敵

心理,ハウツー

 自宅にいる場合の読書の大敵は電車と飛行機の騒音で、これを第1回と第2回で扱った。しかし、これらの騒音は音量としては大きいが、気を散らせるという意味ではもっと問題になる騒音もある。今回はこれらをまとめて採り上げて、自宅での騒音の完結編としたい。

ベランダの風切り音

 部屋の騒音は基本的には窓から入ってくる。羽田新ルートが決まってから、防音工事のようなことはやらなかったが、最小限の対応はした。一つは、エアコンの排気ダクトをパネル通しからはめ殺しの窓ガラス通し(パネルを使うことは同じだが窓ガラスの一部を置き換える)にして、窓が普通に閉まるようにした。もう一つは、サッシの左右の傾きを調整し、弱ったパッキンを新しくして、閉めた時に隙間ができないようにした。ほんの気持ちだが、多少は気密性が向上したはずである。
 ところが、これで全然治まらなかったものがある。冬場の風切り音である。読書というよりは睡眠の障害という感じになっていたものだ。調べてみると、マンションの高層階では普通に起きることらしく、対策も容易ではないらしい。諦めかけていたのだが、状況をチェックしていて、あることに気づいた。冬の強い季節風に関係すると頭から思い込んでいたのだが、実際には、冬から春の変わり目くらいの時期に、斜め前の方向から一定以上の強さの風が吹く時にベランダに風が吹き溜まりのように巻いて音が鳴るらしいのだ。そのような日は意外に少なく、しかもネットの天気予報を見るだけで予測できる。そこで、そのような日は白旗を上げて耳栓をして寝るようにした。こうして敵の正体が分かると、精神的には随分と楽になる。

いわゆる近隣騒音

 今のマンションではほとんどないのだが、昔はいわゆる近隣騒音に悩まされたことがある。その筆頭はステレオである。ハード系の音楽などを大ボリュームでやられると、壁越しにダイレクトに音が響いてくるほどである。あまりひどいと、別の誰かがクレームを入れるらしく、突然静かになったりするが、何日かすると性懲りもなくまた始まる、という繰り返しである。正直なところ、ボリュームがでかいだけの低級音楽だな、余計に腹が立つ、などと思ったりしたものだが、実のところは、音楽が何であっても、うるさいものはうるさい。
 ヴェートーベンでもモーツァルトでも、自分が聴いているのでない限り、騒音に違いはないのである。そういうことで言えば、隣でグールドやアルゲリッチが練習していても、やはり騒音である。ここで昔テレビで聞いた話を思い出した。ある若手の劇団俳優が、住宅地にある空き倉庫のようなところでセリフの練習していたところ、近隣住民に毎度クレームを入れられていた。その後、ある番組でブレークして、これで許してくれるようになるかと思ったら、前と同じように怒られたという。それはそうだろう。要するに、騒音心理は音の内容にはまるで無関心なのである。

風鈴の風流と反風流

 騒音心理が音の内容にはまるで無関心であることから、読書を妨げる意外な敵が生まれる。実に申し訳ない気もするのだが、風鈴がそれである。風鈴といえば、日本の古来からの風物で、その音色は夏場に一服の涼をもたらす、はずである。しかし、騒音心理は音の内容には目もくれない。そして、風鈴の高音は意外に耳につく。残念ではあるが、風鈴は田舎の家の軒先にぶら下がっているべきもので、都会のマンションのベランダに居場所はないのだろう。
 以前、近所にひときわ高い音のする風鈴があった。どこにあるかも分からないのでクレームも入れられないのだが、とにかく音だけする。あまり風のない夏場はともかく、秋になって風が強くなってきても惰性で吊るしたままにしているらしく、鳴りっぱなしである。もう風鈴の季節ではないのだから、実に反風流である。ひっきりなしにキンキンカラカラ鳴るだけの風鈴はまさに騒音発生器である。もういい加減にしてくれ、と思っていたその時に台風が来た。その強風の中でもその風鈴はいよいよキンキンカラカラ鳴っていたのだが、ついに強風に吹き飛ばされてしまったらしい。この時ほどホッとしたことはない。その後、物産展などで風鈴を見ると、そこで聞く音色は素晴らしいのだが、やはり買うのはやめてしまう。

 こうして考えてみると、自宅というのは実はあまり読書に向かない場所なのかも知れない。実際、何か作業を伴う場合は別にして、読むだけなら外で読む方が多い。そこで次回からは外に出てみることにしたい。

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