『睡眠こそ最強の解決策である』は本当らしい
本書『睡眠こそ最強の解決策である』は、さすがに睡眠の重要性を強調し過ぎではないかという感はあるものの、ともかく、睡眠に関する現時点での知見を集大成したような本だ。だんだんと夜眠れなくなってきた今日この頃、何か良い処方箋はないものかと手に取ったのだが、原題に「Why We Sleep」とあるとおり、快眠のためのハウツーよりも研究により判明した知見の解説が主となっている。
と言うより、そもそも現状ではまだ、大々的にハウツーとして展開できるほど効果的な睡眠法はないというのが実情らしい。おそらく、本書で示されている快眠のためのアドバイスは、本書をハウツー目的で手にとる人であれば、ほとんど試したことがあるだろう。唯一、寝室の室温はかなり低い(何と18度台!)のが望ましいというのは初耳だったが。
寝ている間にピアノが上達する!?
とは言え、いかに睡眠が重要であるかは良く理解できるので、スマホやパソコンでダラダラと過ごしがちな夜を早めに切り上げるモチベーションにはなる。ここで睡眠が重要と言うと、明日に備えて頭と体を休める、というようなことを考えがちだが、実際の睡眠はそのようなものではないらしい。むしろ、睡眠中の脳は活発に活動している。しかも、睡眠時にしか行うことのできない重要なプロセスが遂行されているというのだ。
重要なプロセスとは、脳内での情報の整理・統合による記憶の定着やスキルの習得、といったことだ。せっかく覚醒時に有益な活動をしたとしても、このプロセスを欠くと、十分に身につかない。逆に、このプロセスが適切に働くと覚醒時のスキル・レベルを寝ている間に引き上げてくれる、それほど強力なのだ。
一例を挙げれば、ピアニストが夜中までピアノの練習をしていたが、どうしてもマスターできない箇所があった。そのまま寝たところ、翌朝になると、なぜか完璧に弾けたというのである。実は、管理人にも同じような経験がある。夜、詰碁(囲碁のパズル問題)をやっていて、どう考えても手掛かりさえつかめない。そう思っていた問題が、翌朝、枕元にあった本を開くと、考えるまでもなく解けた。それが何度もあった。一晩寝て頭がスッキリしたためだろうと思っていたが、それだけではなかったわけだ。
念のため付け加えておけば、覚醒中の活動が大前提で、ただ寝ているだけではダメだということだ。
「睡眠の質」を下げる睡眠薬とアルコール
睡眠に簡単な処方箋がないというのは、睡眠は休息ではなく活動である、というところから来るようだ。例えば、睡眠のためにカフェインが厳禁なのは常識でもわかるが、睡眠薬もダメ、アルコールもダメというのは、少々分かりづらい。これらがダメなのは、確かに眠ることはできるのだが、脳を麻痺させてしまい、件のプロセスが働かなくなってしまうからである。いわゆる「睡眠の質」が低下するということだ。
もちろん、睡眠薬がダメだといっても、それは現在ある睡眠薬ではダメというだけで、著者も新たな薬剤の可能性までは否定していない。しかし、アルコールに関しては、かなり否定的である。どうしても飲みたいなら朝に飲むべし、とまで言っている(あくまでジョークだが)。管理人はそれほど飲む方ではないので、これはそれほど苦にはならない。ただ、無理して禁酒するほどのものかとも思う。もし、アルコールに(睡眠の質の低下を通した)記憶やスキル習得に対するそれほどの害があるなら、飲む人と飲まない人との間には大きな差が出来てしまいそうだが、周囲を見渡す限りでは、そのようなことは感じられない。
睡眠こそ最強の解決策である
マシュー・ウォーカー 著
桜田 直美 訳
SBクリエイティブ









