保守主義とは「アンチ主義」であった『保守主義とは何か』

保守主義というのは、何となく理解できるようでいて、実は良く分からない。伝統ガチガチの保守派も、反動的な右派も、新自由主義も、一緒くたに保守の範疇で語られることがあるが、共通項が希薄であるように見える。 以前にレビューした『社会はなぜ左と右にわかれるのか ...
極限状況での絶望と希望『白の闇』

冒頭、ある男の目が見えなくなったというところから、会話の引用符もなしに延々と続く本作『白の闇』の物語は、捉えどころがない。社会に生きる人々が次々に、やがては一人を除いて全員が失明するという特異な極限状況の下で、人間はどのように生きようとするのか、答えのな ...
いまだ解読されない奇書の横綱『ヴォイニッチ写本の謎』

奇書や珍本の類ということで言えば、この本を外してはいけないだろう。「この本」とは、本書で扱われている「ヴォイニッチ写本」のことである。「写本」は、書かれた内容はおろか、時代も、目的も不明な全246頁の総天然色絵入り本である。本書『ヴォイニッチ写本の謎』は ...
社会モデル考察の土台づくり『社会科学のためのモデル入門』

本書『社会科学のためのモデル入門』はその昔、「モデル」という点に着目して買ったのだったが、内容的には学部レベルの経済学の入門書というところ。それほど難しくない話をページを割いてとにかく丁寧に丁寧に説明し、そして考えさせる、アメリカの教科書に良くあるスタイ ...
認知のアーティファクトの未来予測『人を賢くする道具』

未来予測というものは、大抵は外れる。それも、何か別の対象を予測していたのかというくらいに外れる。しかし、それは未来は想像もつかないくらいに開けていることを示していると考えれば、まんざら悪いばかりでもないかも知れない。本書『人を賢くする道具』は、未来予測の ...
読書と騒音② 羽田新ルートの飛行機騒音

読書のためには、それなりの環境を整えることが必要だ、ということで始めた「読書と騒音」シリーズの第2回。今回は、前回の電車騒音からアップグレードして飛行機騒音である。電車騒音が最大でも80db程度であるのに対して、飛行機騒音は最大で100dbに迫る強敵。飛 ...
政治家に問う自覚と責任『職業としての政治』

少し以前、人気ジャーナリストであるI氏が、与党の二世議員であるK氏に「マックス・ウェーバーの『職業としての政治』についてどう思うか」という質問をしていた。自分はしっかり予習しておいて、おそらくは読んでいないか忘れてしまっているかの相手に質問するのだから、 ...
超俗人の俗世界での闘い『ピープス氏の秘められた日記』

このブログには本のジャンルに対応したタグが15個あるが、本書『ピープス氏の秘められた日記』にはどれを付けたら良いのか悩ましい。とりあえず、当時の歴史が分かるから「歴史」と付けてみたが、いわゆる歴史本ではない。日記文学というのもあるから「文学」も入れてみた ...
獰猛な自然の闇、原始の人間性の闇『闇の奥』

本書『闇の奥』は、ポーランド系イギリス作家である作者の代表作。アフリカ最奥部の出張所で音信を絶った腕利きの象牙採取人を、船乗りの主人公マーロウが救出しに向かう、という筋書きだ。自ら船乗りとしてコンゴ川の上流まで行った体験を基にした、作者お得意の海(本作で ...
「夜警国家」ならぬ「夜警メディア」はいかが『誤報』

本書『誤報』は、タイトルそのまま、マス・メディア(主に新聞)の誤報に焦点を当て、その原因と過程を分析・検証したもの。著者自身がかつて悩まされ、また他に迷惑もかけてきた誤報についての著者なりの総括である。その著者は朝日新聞の元記者。誤報の例は各新聞から採ら ...